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40話 受付嬢の忠告と、魔法剣士への懸念

Author: みみっく
last update Huling Na-update: 2025-10-25 06:00:14

 そらは怒りの表情が消えずに、男を真っ直ぐ睨みつけるように言った。その声は低く、ギルドの喧騒すらも凍らせるような冷たい響きを持っていた。

「次、絡んできたら――今度は当てるからっ」

 その言葉と共に、俺はほんの少しだけ威圧のオーラを放った。そのプレッシャーは、男の全身に重くのしかかり、呼吸すら困難にさせる。男は、恐怖で目が泳ぎながら、その瞳を真っ直ぐ睨みつけられた。

「……はい、すみません……」

 男の口から出たのは、情けなく震えた声だった。その姿には、先ほどの傲慢さは欠片も残っていなかった。

 気付くと、受付に並んでいた人たちはすっかり避難していて、列は完全に消えていた。騒ぎの中心にいた俺たちに、誰一人として近寄ろうとしない。そして、やっと順番が回ってきた。俺たちも結果的に割り込んだ形になったけど……誰も何も言ってこなかった。ギルド全体が、先ほどの出来事の余韻で静まり返っている。

 そらは、何事もなかったかのように、元気な声で受付の女性に向かって言った。

「ハンターの登録を4人分お願いしまーす!」

 受付の女性は、顔色こそ青ざめていたものの、すぐにプロの表情を取り繕い、小さく頷いた。

 そらは一応、腰に剣を帯びていた。先ほどの騒ぎでその剣を使うことはなかったが、その存在は受付の女性の視線を集めた。受付の女性は、そらの剣と、後ろにいる幼い少女たちを見て、首をかしげながら尋ねてきた。

「えっと……前衛の剣士1人と、後衛の魔術士3人のパーティーということでしょうか?」

「ボクは魔法剣士で、魔法も使えますよ」

 そらはにっこりと笑って答えた。その言葉には、ただの剣士ではないという自信が込められていた。

「あら……そうなんですか? でも、普通は魔法が使えるなら、魔法の技術を上げた方が需要もありますし、後衛のほうが少しは安全なんです。剣士は前衛で常に危険ですし、毎日の鍛錬も欠かせないから、大変なんですよ。さっきの動きを見て、剣士としても通用するとは思いましたけど……」

 受付の女性は、そらを心配するような表情で忠告した。彼女の言葉は、この世界の常識と現実に基づいていた。

「そうなんですね」

 そらは形式的に相槌を打つ。(まあ、考えればすぐに分かるけどさ……前衛のいないパーティってどうなのよ?)彼の内心では、女性の意見に同意しきれない思いが渦巻いていた。

「アドバイスですが、剣は諦めて、その鍛錬の時間を魔法を極める時間にあてて努力されたほうが良いと思いますよ。魔法が使えるなんて素晴らしいことですし、それにお若いですから」

 受付の女性は、熱心な口調で真剣に忠告した。彼女の目は、そらの将来を思っての純粋な善意に満ちていた。

「ありがとうございます。そうしてみます」

 そらは、女性が好意で言ってくれているので、内心はともかく素直に返事をしておいた。彼の表情には、年上のお姉さんのアドバイスに耳を傾ける謙虚さが表れていた。

「では、登録は魔術士四人ということでよろしいですか?」

 受付の女性は、そらの返事を受けて確認した。

「はい、それでお願いします」

 そらは、余計な波風を立てる必要はないと考え、女性の提案をそのまま受け入れた。

「魔術師だけのパーティは、少しバランスが難しいかもしれません。前衛を入れるか、依頼によって他のパーティと合同で依頼をこなすのも一つの手ですよ。ですが今日は、とりあえず個人登録とパーティの登録を済ませておきますね。こちらに記入をお願いします」

 受付の女性は、書類を差し出しながら、最後まで親切にアドバイスを続けた。その口調は、幼い彼らを気遣っている様子を物語っていた。

「分かりました」

 そらは受け取った。四人で登録用紙に記入を進める。

 名前、年齢、性別、職業——すべて書き終えて提出すると、受付の女性が内容を丁寧に確認してくれた。彼女の指が、紙面を滑る。

「魔術士の方は魔力測定がありますので、こちらへどうぞ」

 受付の女性はそう言いながら、カウンターの奥にある扉を示した。

 ……はっ!? 聞いてないんですけど!?!!

 そらの心臓はドキンと跳ねた。思わず帰ろうかと考えたけれど、隣を見ると三人ともニコニコと嬉しそうにしている。ここで俺が逃げたら、きっとガッカリさせてしまう……なんとかならないかな。彼は内心で焦燥感に駆られ、どうにかこの場を切り抜けようと必死に思考を巡らせた。

 ……いや、魔力測定は「魔力を込めるタイプ」だ。抑えれば大丈夫なはず!

 そらは、自身の桁外れの魔力を思い出し、全神経を集中させて魔力制御に賭けることにした。

「こちらの魔力判定石に、魔力を最大限込めてくださいね」

 受付嬢の声に、エルが元気よく一歩前に出た。彼女の瞳は期待に輝いている。

「じゃ、わたしからねー!」

 エルが石に手を当てると、石はじわりと光を膨らませた。その光は次第に強さを増し、ギルド内の注目を集める。

「わぁ、Cランク相当です。すごいですね!」

 受付嬢は驚きの声を上げた。Cランクは、新人としては十分すぎるほどの評価だった。

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